アンカーステップはやっぱり大事
トッププロはいくつものプロセスを通り抜けた末に今のスタイルを築いてきました。
自らが流行を作り、スタイルの変遷の先端を行きます。
その下に位置する大勢のプロ、あるいはプロとアマチュアの狭間で活動する上級者や中級者も、業界で流行するスタイルは無視する訳にはいきません。
ところで、WCSというダンスはリンディーホップなど、古くからあるスウィングダンスから派生するようにして生まれました。
WCSとなってからの原型もまた、他のスウィングダンス同様、ステップ重視のパターンで構成されました。
割とテンポが速く、男女が位置を入れ替わったり、ターンしたり…ということ自体を目的とするパターン。
対して、現在踊られるWCSの主流はパターンではなく、表現を重視するスタイル。
テンポは明らかに遅くなり、激しく移動することは稀です。
当然、ステップそのものに充てがわれる役割は小さくなりました。
反対に重要度が増したのがボディームーヴメント。
身体のパーツ、パーツで音楽や感情を表現します。
WCSの歴史と共に最も大きく変化したのがアンカーステップといって良いでしょう。
アンカー自体のバリエーション増加もさることながら…
パターンが複雑化、コンビネーション化する際に省略されることが増えました。
当然です。
目に映る時点で、重要なのは“そこ”じゃないのですから。
さらに近年のスローテンポ、ストレッチ多用のスタイル。
コネクション維持の点で、分断の元になりやすいアンカーステップは次第に踏まれなくなりました。
では、WCSレッスンを受ける初心者、初級者はアンカーステップを練習する必要はないのか?
また、アンカーをしないパターンを覚えるだけで良いのか?
答えはノーです。
最初に言いました。
流行を作ってきたトッププロたちは、「いくつものプロセスを通り抜けてきた」と。
アンカーを踏まない彼らもアンカーを踏む時代を過ごしてきたのです。
いや、アンカーそのものに最大限の注意を払って嫌というほど練習をしたはずです。
トッププロが教えるレッスンで用いるほとんどのパターンは、当然のようにアンカーを踏む前提で我々生徒に充てがわれます。
人間は生まれる前に、母親の胎内で単細胞生物から高等哺乳類への進化の旅を経験するといいます。
もっと下等な動物は、人間の胎児より早く進化の旅を終えて生まれ出てくるという訳です。
それと同じ。
現在進行形で大きな進化を遂げるダンス、WCSを習得するのにいきなり現在のスタイルを踊ろうとするのは無理があります。
まずは原型通りのパターンを完全にマスターする。
それと比較するように、バリエーションや省略を覚え、表現の世界に入っていく。
「アンカーを踏まない」という課題のレッスン以外では、馬鹿になって丁寧なアンカーを踏んでください。
そのアンカー一つ一つの意味が身体の中に宿った頃、自然に省略したり他の動きで代用できる、表現豊かなダンサーに成長できているはずです。