Prologue
小説や演劇には、序章、序幕というものがあります。
いきなり本編としてスタートし、息継ぐ隙もなく終わりまで進めるより、
物語の舞台となる状況を説明したり、事件の発端を切り離して描き、落ち着く間を取ってから本編に入る方が鑑賞する人にとっては心の準備がしやすく、感情移入も進みます。
ペアダンスも同じです。
リーダーがいきなり最初のステップから本編レベルに力のこもったパターンを始めると、フォロワーは付いていくのに難儀します。
自動車のマニュアル運転にたとえるなら、
最初のステップリードは必ず、半クラッチから。
技量や好みが判らない、初めての人と組むなら尚さらです。
易しいパターンから始め、相手を理解できてから徐々にギヤチェンジしていくのです。
既にほとんどのリーダーがやっていることと思います。
ですが、
ここでもう一歩踏み込んで、導入部(プロローグ)として独立させたパートを作ってみてはいかがでしょうか。
組んですぐに動き出すより…
手をつないだり、背中に手を置いた状態でコネクションやフレームの強さを確認する時間を取ってみる。
この数秒の間に、ビートに合わせた体重移動の位置とタイミングを明確に女性に示す。
アルゼンチンタンゴではこれが無いと動き出すタイミングが図れないほど不可欠ですし、WCSでもこれに時間を割かないリーダーはまず見掛けません。
サルサではベーシックステップが決まっているので必要ないと思われるかもしれません。
では、タンゴやWCSを長く踊るリーダーの多くが無意識に行っている、踊り出し前の “儀式” はどうでしょう。
それは、「今からリードしますので、付いてきてください。」という “挨拶” を無言メッセージで送ること。
サルサでも、このプロローグがあるのと無いのとでは、本編での噛み合いに違いが現れるように思うのです。
プロローグでの無言メッセージを受け取る器を持つ(つまり、フレームやコネクションに対する意識が高い)女性は、自らも無言の返信を送ってきます。
このやり取りをしたペアの間には、努力しなくても(以前述べた)“見えない伸縮棒” が出来上がります。
現実問題、ペア間で共有する情報の密度が上がるのも大きいですが、
何よりも、踊り始める前にプロローグを挟む男性はスマートに見えます。
女性からの信頼度、好感度が上がるのは確か。
男性にとって損することは何も無い。
やらなきゃ損です。