揺らぎのリズム 2
前記事で均等分とならないリズムの例として挙げたシャッフル。
スウィングとも言われるだけあって、スウィングジャズのリズムが正にそれです。
「スウィングダンス」というは、そもそもそのスウィングジャズで踊るから。
揺れるリズムで踊ると、意識せずとも心も体も弾み、熱が入るものです。
動画検索したら、1930年代のリンディーホップ動画が見つかりました。
正にストリートダンス。
血沸き肉踊るというに相応しい。
飛んだり跳ねたり回ったり…
ダンサーたちのルーツであるアフリカの土着的舞踊の影響が色濃く残っているのでしょう。
白人の上流社会で育まれてきたワルツとは対極的な香りがします。
これが大流行し、白人の間でも踊られるようになると、
映画や舞台で演出しやすいように、スロット(移動の指標となる縦長ライン)を意識したハリウッドスタイルという踊り方が生まれたといいます。
ここら辺は、サルサダンスで
土着的なキューバンサルサが米国に紹介されると、直線的に行ったり来たりを繰り返すLAスタイルや、NY-On2スタイルが派生したのと非常に似通っています。
ストリートダンスであれば、ギャラリーが囲む中で秩序を考えることなく感覚的に動くのが普通でしょうが、
白人社会の中で商業的に踊るのであれば、
レッスンとして教えたり、コンペティションで採点するにしても、クラブやダンスホールのフロアーで遊ぶにしても、スロットを決めて秩序正しく踊る方が都合がいい。
これに限らず、スウィングダンスも時代や場所が変われば、それに合わせて様々な変化を起こし、いろいろな派生ダンスが生まれました。
West Coast Swingもそんな派生スウィングの一つ。
ハリウッドスタイルのリンディーホップが、更に土着性を削ぎ落とし、
他のダンスの要素を採り込み、
時代の流行音楽に合わせて踊るうちに
似て非なる別のダンスを生んだのでしょう。
同じリンディーホップでも、1980年代のハリウッドスタイルでは既に上下にバウンスしなくなり、リード手の激しすぎる動きが制御されています。
これがWCSの基になったのは明らかと思われます。
さらに、スウィングジャズがクラシカルな音楽ジャンルの一つに過ぎない現代では、
スウィングする音楽より、商業音楽の核であるポップスやクラブミュージックで踊ることが主となったのも十分納得いきます。
こうして最も後発といえるWCSは、
・スウィングとは関係ない音楽で
・飛んだり跳ねたりしない
あらゆる要素を制御した中で、むしろコネクションを味わうダンスとして現在も変化を続けているのです。