メンタル・コネクション≒格闘技の間合い
リード&フォロー情報はコネクションを通してやり取りされます。
コネクションというと、パートナー同士の「手」という認識しかない人も多いかと思いますが、実は視線を交わしたり、気を重ね合わせることもコネクションの一つなのです。
特に「気」については、あまり教わることがないかもしれませんが、このメンタル・コネクションと言われる意識の共有が二人の間にあるのと無いのとではリード&フォローの通りが全然違ってくるから不思議です。
私のレッスンでは、サルサでもWCSでも常に「2人の胴体の間に太いシャフトが通っている」とイメージするよう指導しています。
見えない物を見えているかのようにして踊るので、「気」というより「念」に近いかもしれません。
シャフトとは、左右の両輪をつなぐ車軸、あるいはバーベルやダンベルで2つの重りをつなぐ軸のこと。
サルサの場合、前後移動だけしている間はこの基本イメージのままリード&フォローできるのですが、普通にクロスボディーリードをするとそこで途切れてしまいます。
一方、同じ様な動きである、WCSのレフトサイドパスの場合は、男性のリード感においても女性のフォロー感においても、この “見えない” シャフトを比較的楽にキープできるように思います。
何も教わることなく、単純に移動/入れ替わりを行った場合、人はまずこのような “シャフト感” は持ち得ません。
ペアダンス独特の意識なので、始めてペアダンスを習う人がすぐに会得するのは難しいでしょう。
しかし、格闘技や武道ではこの感覚に似たものが存在します。
いや、人間同士だけでなく、人間と獣、獣同士でもあるので本能といった方がいいのかもしれません。
それは、対戦する者同士が常に維持しようと努める「間合い」。
相手の攻撃をかわし、尚かつ自分も攻撃できるギリギリの間隔。
「相手が逃げれば、自分は間を詰める。
相手が迫れば、自分は退く。
相手がどちらかに回ろうとすれば、中間点を軸に対称方向に移動する。 」
「間合い」 は圧縮されても、引き延ばされても自然に元の長さに戻ろうとします。
また、一時的に角度が変わってもすぐに180度の線状に戻ろうとする性質もあります。
ダンスで言えば、まるで昔流行ったブルワーカーの様な伸縮棒を、お互いの腹の間に挟んで踊るような感覚です。
確かな意思エネルギーを感じさせる、このシャフト。
ペアダンスでは単なる「間隔」ではなく、リード&フォローの「意思伝達の通り道」の役割を担います。
これを明確に示すことのできるリーダーは、始めたばかりのビギナー女性をも簡単にリードしてしまいます。
リードは “手でするもの” ではない。
うちのレッスンの基本理念でもあります。